負の二項係数が重複組み合わせになることの簡単な理解
負の二項係数に現れる -1 がしっくりこない...
負の二項係数は、二項係数を拡張して以下のように表されるものです。
ちなみに通常の二項係数はこんな感じです。
しっくりこないこと
- の がどこからくるのかわからない
- は であるがなぜ重複組み合わせになるかがわからない
- と同じような直観的な解釈がしたい!
は との比較からしてしっくりきます。 しかし、通常の二項係数に書き直したときにでてくる の がしっくりきません。
なぜ一つずれるようになるのでしょうか?
一言で言うと...(忙しい人のための結論)
(2)より、 の係数を考えると、個の各項から重複を許しての冪乗の項を選ぶと解釈できます。 このように考えると、の係数はになることがわかり、(1)の解釈を通常の二項係数の場合と同様に考えることができます。
これを以下では詳しくみていきます。
まずは計算してみる
まずは定義に基づいて計算を進めてみようと思います。 負の二項係数の証明というよりは、式変形を追いかける形になります。
1. まずは普通の二項係数みたいに展開してみる
納得のいく という表現から書き直していきます。
2. マイナスをくくり出す
分子を次のようにしてマイナスをくくり出します。 ここで、分子の掛け算の項の数が個あることに注意すると次のようになります。
あ、なんか出てきましたね。
から 個順番に整数を選択するとその最後が になってその負をとると になるわけですね。
3. 通常の二項係数に置き換える
1, 2 の計算から負の二項係数を通常の二項係数に置き換えてみます。
よくみると重複組み合わせになっている
3 の最後の計算を見るとこれは重複組み合わせになっています。
ここがもしかしたら、しっくり納得がいくためのヒントになるかもしれません。
でもしっくりはこない
でもこれでもまだしっくりはきません。。。
通常の二項係数のように項の選び方の場合の数としての解釈ができないものでしょうか?
解釈してみる
上の計算での出どころは多少わかりましたが、まだしっくりはきません。 通常の二項係数での有名な解釈を復習します。
通常の二項係数のよくある解釈
まず、通常の二項係数は以下の展開で登場します。
これは次のように解釈できます。
を展開する際に、個のからそれぞれとのどちらかを選び出して多項式を構成していると考えます。 例を考えます。 の係数は、個の からを選んだものが個あると考えられます。 したがって、個のうち個のから を選び出すと考えられるので、その係数はになると解釈できるわけです。
負の二項係数の解釈
負の二項係数でも同じような解釈がしたいのですが、マイナスが入っていると解釈しにくそうなので次のような展開を考えてみます。
分数も使いにくいので、以下のような(テイラー)展開も思い出します。
をこれを用いて展開すると、
となります。 の個の積になっている点に注意してください。
この形にした上で先ほどの通常の二項係数のよくある解釈と同様の解釈をしてみます。
今度はもう少し複雑です。
同じようにの係数を考えます。今回は個あるの中から、,,,... のうちのどれか一つをそれぞれ選ぶと考えることができます。
例えば、 でのケースを考えます。
このときのの係数を考えます。
を一つの項として考え、左から項A,B,Cと名前をつけます。
項A,B,Cから,,,...から一つ選び出してを構成することを考えると、 が1つと が2つのパターンとが2つとが1つパターンが考えられます。
ここでさらに をが「二つある」と解釈すると、項A,B,Cから重複を許しての合計が二つになるように選び出すことと等しいことに気づけます。
したがって、の係数はその場合の数と一致するので、 となることがわかります。
確認のため全パターン書き出してみます。
項A | 項B | 項C |
---|---|---|
書き出すことでも の係数が になることが確かめられました。
最後によくある場合の数の問題に見えるように色のついたボールに置き換えて考えてみます。
色のついたボールの問題への変換
を 個のボールとみなします。
このように考えることで以下のような対応づけが可能です。
"個あるの中から"
→ を一つの色のついたボールの集まりとみなします。 つまり、種類のボールが存在していると読み換えます。
"の中から、,,,のうちのどれか一つをそれぞれ選ぶ"
→ そして、これはある色(例: 赤色)のついたボールの集まりを表しており、を選ぶ時にはその色(例: 赤色)のボール0個を表していると考えます。 はその色(例: 赤色)のボール1個を表し、同様にはボール2個を表しています。 各色のボールは個(以上)あると読み換えられます。
したがって、先ほどの問題は
n種類のボールがそれぞれn個(以上)ある。 この中からボールをr個取り出す時の場合の数を求めよ。
と変換できます。
答えはもちろん です。
まとめ
の展開を考えることで、通常の二項係数と同様に負の二項係数も各項からの冪乗項を取り出す場合の数としての解釈ができるようになりました。
これで負の二項係数について忘れた場合は、を展開することで思い出せるかもしれませんね。
(負の二項係数に登場する重複組合せがテイラー展開が必要になるとはなかなか面白いですね)